2016年02月11日

よなおしギターの音を大きくする 第四回『検証』

特集記事『よなおしギターの音を大きくする』も今回が最後になります。

前回まで、機械的に音を大きくするために必要な機材とその使い方を簡単にご紹介してきました。

最終回の今日は、いよいよ実際に音を出してみて、『ピックアップ』の取り付け位置の違いによってどれくらい音に差が出るのかを検証してみましょう。

まず、ピックアップの取り付け位置は以下の ①~⑤ に決めました。

よなおしギターの音を大きくする 第四回『検証』


上記以外の場所にもピックアップを取り付けることはもちろん出来ますが。今回は、『演奏する時に邪魔にならない場所』かつ『音の違いがはっきりと確認できそうな場所』を条件に選んだ結果、この5ヵ所に決定しました。

検証の手順は以下の通りです。

1、①~⑤の任意の場所にピックアップを取り付ける。

2、ピックアップを取り付けたらシールドでアンプに接続する。

3、アンプのボリュームを調節する。

4、よなおしギターを演奏する。

5、アンプのスピーカーから出た音を録音する。


手順としては簡単なのですが、純粋に『ピックアップの取り付け位置による音の違い』を調べたいので、その他の条件は全て同じになるように注意しました。

例えば、手順4で演奏している内容は全て、『ドレミソラド』、『3つのコード』、『赤とんぼの一節』の3種類に統一、さらに、演奏する時の右手の力加減もなるべく同じになるように気を付けました。

手順3での、アンプのボリューム調節も全て同じです。前回ご説明したイコライザーも『BASS(低音)』、『MIDDLE(中音)』、『TREBLE(高音)』の3つとも、真ん中の『5』の位置に合わせてあります。

こうすることで、ピックアップで拾った一番素直な音がスピーカーから出てくることが考えられます。

その他の条件も考えられるだけ全く同じにしましたので、これからお聞きいただく音の違いは、純粋に『ピックアップの取り付け位置による違い』と思って頂いて大丈夫です。

以上を踏まえた上で、①~⑤ の位置にピックアップを取り付けた時の音をお聞きください。


☆ ①にピックアップを取り付けた場合




非常に良い音がします。他の音を聞けばわかるのですが、①の場所が生のよなおしギターの音に最も近いです。5,6弦に近いので、低い音がしっかり出ていて広がりがあり、包み込むような優しい音がします。

もし、よなおしギターらしい優しい音を楽しもうと思う場合、①の場所はかなりお勧めです。

ただし、この広がりのある音がマイナスになる場面もあるかもしれません。

音に広がりがあるということは、音がずっと残っているということです。
音は、重なれば重なるほど不協な響きになっていきます。音がずっと残っていれば、演奏が進めば進むほど、だんだんと不快な響きになってしまうということですね。
それを防ぐためには、ある程度、音の広がりを制御しながら弾いていかなければなりません。

つまり、この音でキレイな演奏をするには、ある程度の演奏技術が必要になるということなんです。

また、音が反響するような広い場所でより大きな音で演奏する場合、この広がりのある音がさらに広がって残ってしまうことになります。
そうなると、低い『ボワンボワン』とした音がいつまでも鳴ってしまって、酷い場合には、何を演奏しているのか聞き取れなくなってしまったり、『ハウリング』というトラブルを起こしてしまう可能性もあります。

この①の音は、一人で部屋で練習や演奏をする時には非常に適した音と言えますが、場合によっては『扱い難い音』ということが言えます。


☆ ②にピックアップを取り付けた場合




①と比べて、明らかに低音が抑えられていますね。

ピックアップの取り付け位置が、高い音の弦(1,2弦)に寄っているので、低音よりも高音を多く拾っていると考えられます。
この、『低音が抑えられた音』は、そのままでは広がりや優しさが薄れてしまう感じがしますので、一人で弾いているとちょっと物足りなくなってしまうかもしれません。

ただ、①とは逆で、ある程度の広さの場所で大きな音で鳴らす場合は、かなり『扱いやすい音』ということが言えると思います。

最初に書いたように、今回の検証での音量の設定は、イコライザーの『BASS(低音)』、『MIDDLE(中音)』、『TREBLE(高音)』の3つとも、真ん中の『5』の位置に合わせてあります。これは、今回の検証のための措置ですので、実際には、演奏する場所などの状況に合わせてイコライザーを調節し、その状況に最も合った音を作っていくことになります。

つまり、実際にはお聞きいただいている音に、さらに調整を加えていかなければなりません。

演奏会など、音の調整が大きく必要になる状況では、低音、中音、高音、どれも特に目立っていないバランスの良い音が最も『扱いやすい音』ということが言えます。

そういった意味で、②の音は、①に比べると『扱いやすい音』ということが言えると思います。


☆ ③にピックアップを取り付けた場合




②の音が『扱いやすい音』ということを説明しましたが、それでも、まだ音の広がりが大きい気がします。
①の音ほど大きな音ではないのですが、それでも音が残ってしまっているのは、ギターが鳴る時に一番振動する『表板』にピックアップを取り付けてあるからでしょう。

つまり、①も②も、最も振動する表板にピックアップが付いているので、たくさんの振動を拾っているんですね。

それなら、もしもっと音の広がりを抑えたい場合には、表板よりも振動しない場所にピックアップを取り付ければ良いことになります。

③は、ギターの底のいわゆる『側板』と言われる部分になり、表板よりも振動は少ないだろうと予想できます。

確かに、明らかに、音の広がりが小さいですよね。ただ、音そのものも小さくて迫力がりません。これでは、演奏していても面白くないかもしれませんね。


☆ ④にピックアップを取り付けた場合




では今度は、表板ではありますが、弦の振動を直接伝える『ブリッジ』から離れた位置に取り付けてみます。

ブリッジは、第二回の記事でもお話ししましたが、弦の振動を表板に伝える非常に大事な部分です。当然、ブリッジの周りの木はたくさん振動するだろうと予想でき、実際、ブリッジに近い①も②も音の広がりは大きいですね。
それなら、表板でもブリッジから離れた場所にピックアップを取り付けるとどんな音がするのか、やってみました。

この音、私はとても好きです。

①や②よりも音の広がりが抑えられているのですが、③よりも音が良く、かろうじてよなおしギターの音の優しさも残っている感じがします。

何より、低音~高音の音のバランスが非常に良く、『扱いやすい音』という感じがします。

ただ、もう少しだけボリュームがあるとイイな~と感じます。


☆ ⑤にピックアップを取り付けた場合




先ほど、ギターは、ブリッジという部分で弦の振動をボディに伝えているということを説明しましたが、実はもう1ヵ所、弦の振動をボディに直接伝えている部分がります。

それが、『ナット』です。

つまり、ギターは、『ブリッジ』と『ナット』の2ヵ所を介して弦の振動を直接ボディに伝えていることになります。

ただ、ナットの方は、ご覧のように最も振動する表板に直接は着いていませんね。ナットは、ヘッドとネックとの境い目に着いているんです。

よなおしギターの音を大きくする 第四回『検証』


もしこのナットの近くにピックアップを付けたらどんな音がするのか?①や②ほどの広がりのある音、大きな音はしないだろうけど、ある程度はそれに近い音が出るのではないか、と予想が出来るわけです。

いかがでしょうか。⑤の音は、予想通りかなり広がりのある音に聞こえます。音量も、④よりも大きいくらいですね。
音のバランスも、だいぶ良い感じに聞こえます。

ただ、このぐらいの音の広がりでも、状況によっては『扱い難い音』となってしまうかもしれません。

先ほどから、広がりがあり音が残ってしまうと『扱い難い音』とご説明していますが、これは決して『音の広がりは必要ない!』と言っている訳ではありません。演奏会や、特にレコーディングなどでは、音の広がりはとても大切な要素になり、ほぼ確実に必要になります。

ただ、その場合の音の広がりは、『エコー』や『リバーブ』といわれる特殊な効果を『後から機械で付け足す』ということなんです。

つまり、望み通りのキレイな音の広がりを自由に付け足していくためには、その元となる音は『広がりの無い音』の方が扱いやすいということになります。

かなりややこしい説明になってしまいましたが、『エコー』や『リバーブ』に関しては、またの機会に詳しくお話しさせて頂きます。

以上で検証は終了です。

今回使用したピックアップは、評価通りとても良い商品でした。まず、『ザー』とか『ジー』とか余分な音(ノイズ)が全くありません。そして、非常に素直な音がしますね。
このピックアップのお陰で音の違いがハッキリと分かり、今回の検証が上手くいったのだと思います。

最後に、今回の検証を踏まえて、私の個人的な結果を言います・・・

1人で部屋で練習したり楽しんだりする時は ① or  ⑤

演奏会やレコーディングの時は ④

の位置にピックアップを取り付けて演奏するのが良い感じがします。


以上で、四回に渡ってお送りしてきました特集記事『よなおしギターの音を大きくする』は終了です。

もっとシンプルな記事にするつもりでしたが、あれもこれも説明しなければ済まない性格で・・・また長くなってしまって済みません。

よなおしギターを長く弾いていれば、必ず『もっと大きな音で演奏したい!』と思う時が来ます。逆に、音を大きくして演奏することで、『もっとたくさんの人と一緒に楽しみたい!』と思うようになるかもしれません。

ぜひ、よなおしギターの音を大きくする方法を、今から覚えておき、出来ることならチャレンジしてみてください。

今回の記事が、よなおしギターをより楽しむためにお役に立てば幸いです。





よなおしギター



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