2016年02月22日

よなおしギターによる『海の声』

先日、ある方からリクエストを頂きました。

『海の声』をよなおしギターで出来ますか?

というものです。

私も、あの某携帯電話サービスのCM『三太郎シリーズ』はとても好きなんですが。その三太郎の中の浦島太郎を演じる桐谷健太さんがCMの中で歌っている曲が『海の声』ですね。




ご覧のように、この曲を歌っている時に桐谷健太さんは『三線』という楽器を弾いています。『三線』は、沖縄の伝統楽器で、沖縄の曲の独特の雰囲気を出すのに欠かせない楽器でしたね。

少し調べましたら、この曲、BEGINの島袋さんがこのCMの為に作曲したそうです。

覚えやすいメロディ、感動的な歌詞、三線の響き、そして桐谷さんの声、それらが合わさって心に残る素晴らしい曲になっています。

というわけで。この『海の声』をよなおしギターでアレンジすることになったのですが、もう初めて聞いた瞬間から『沖縄音階』が主に使われている曲だろうと想像できたわけです。

沖縄音階で作られたメロディは、やはり独特ですからね。ヨナ抜き音階の曲よりも分かりやすいかもしれません。ですから、よなおしギターを『沖縄音階』にチューニングすれば、恐らくある程度は簡単に出来るだろうと思いました。

『三線の花』に続く、沖縄音階チューニングでのアレンジです。

ここで『沖縄音階』を確認しておきますと・・・

< ド ・ ミ ・ ファ ・ ソ ・ シ ・ ド >

でしたね。この通りにチューニングをすれば、アッという間によなおしギターが『沖縄専用楽器』になるわけです。

で、このチューニングでアレンジし演奏したものがこれです。




基本的には、弾き語り用の伴奏として弾けるようにアレンジしました。ただ、キイはCに変えてあります。よなおしギターの性質上、キイをCにした場合が一番簡単に演奏できますので。

実は、よなおしギターを沖縄音階チューニングにして演奏すると、この曲も驚くほど簡単に演奏できます。特に特徴的なサビの部分は、あまり左手を使いません。比べて、桐谷さんの三線を演奏する時の左手の指の動きを見て頂くと分かるのですが、明らかに三線の方が左手を動かしています。

分かりやすいように、サビの三線のメロディと同じものをよなおしギターで弾いてみましたので、桐谷さんが三線を弾いている時の左手の動きと比べてみてください。




この動画からも分かるように、『沖縄音階にチューニングされたよなおしギターは、沖縄の伝統楽器である三線よりも簡単に沖縄独特のメロディが弾ける』ということになります。

これは何となく不思議な感じがしますが、もちろん理由があります。

普通のギターは、弦が6本ありますね。この6本という数が、初めてギターを触る方にとっては『多い』と感じることがあります。

これは当たり前の感覚だと思います。なぜなら、6本の弦を押さえるのに使える指は、左手の4本しかないからです。ギター演奏の時、左手の親指は常にネックの後ろに置いてありますので、実際に弦を押さえるのは左手の親指以外の4本の指だけなんですね。これは右手も同じです。右手の小指は、ギター演奏にはほとんど使われません。ですから、最高でも右手の指も4本しか使いません。

4本の指で6本の弦を扱っていく。

こう考えると、確かに弦が6本では演奏が困難な感じがしますよね。

そんなギターのイメージからか、これまで弦楽器をより簡単に演奏できるようにする場合は『弦の数を減らせばいい』という発想がされてきていました。あるいは、この逆もしかりで、『弦の数が少なければ演奏は簡単になる』と考える方が多かったんです。

つまり、『ギターが難しいのは弦が6本もあるからだ!』というわけです。

その為、一五一会はじめ、その他オリジナルの新しい弦楽器で『簡単に演奏できる』とキャッチコピーの付くものの多くは、6本よりも弦の数が少ない仕組みになっています。

また、初めてでも簡単に演奏できるイメージの弦楽器として、ウクレレ(弦4本)、二胡(弦2本)、三味線(弦3本)、時にはベース(弦4本)などがあげられることが多いんです。その中で、文字通り弦が3本しかない『三線』も、ギターよりも簡単に弾けそうなイメージがあり、楽器演奏の経験が無い方に人気があるようです。

ただ、私としてはあえて『弦楽器は弦の数が少なくなると逆に演奏は難しくなる!』と訴えたいと思います。

例えば、弦が3本しかない楽器で <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> の8つの音を弾く場合、例え、その内の3つの音を開放(左手を使わない)で鳴らせたとしても、その他の5つの音は『絶対に左手を使って押さえる』必要が出てきます。
もっと極端に考えてみましょう。例えば、弦が1本の楽器があるとします。その楽器で <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> を弾くには、少なくとも左手で7ヵ所の部分を覚えて正確に押さえなければなりません。

それなら、<ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> の8つの音を最も簡単に鳴らせる弦楽器を考えてみます。

これは簡単です。チューニングを <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> に合わせた8本の弦が張ってある楽器を作れば良いんです。そんな弦楽器があれば、左手は何も使う必要が無く、右手で上から順に弦を弾いていけば簡単に <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> が弾けるわけです。

つまり、片手で <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> の音階が弾ける弦楽器です。

どうですか?簡単に <ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> が弾けるのは、圧倒的に弦の数が多い弦楽器の方ですよね?<ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド> が簡単に弾けるということは、当然、その音階を使った曲も簡単に弾けるわけです。

例えば、上記の1本弦の楽器と8本弦の楽器で『ドレミの歌』を弾いてみるとします。

1本弦の楽器は、想像しただけでも左手をたくさん動かす必要があることが分かります。と同時に、当然、右手も1本だけとはいえ、弦をズッと弾くことになります。

一方、8本弦の楽器は、『ドレミの歌』を演奏する分には、左手は一切使いません。片手で弾けるということです。ただ、右手は、任意の音の出る弦を選択して弾いていくので、忙しいですね。

いかがでしょうか?どちらが簡単に演奏できそうですか?普通に考えれば、片手に集中できる8本弦の方が簡単に演奏できると考えますよね。

ではなぜ、これまでは『弦の数が少ない方が簡単』と思われていたのでしょうか?

一言で言えば、『勘違い』だと思います。

今ご説明しました、1本と8本の弦を持つそれぞれの楽器、確かに、左手の動きに関しては8本弦の方が圧倒的に簡単です、全く使わなくて良いので。ただし、右手の動きに関しては、8本も弦があると任意の音に合わせて弦を選んでいかなければならないので、1本の弦を弾くよりも『選択肢が増える』ことになり動きが複雑になります。

つまり、『弦が少ない方が右手の使い方が簡単』ということなんです。

この『右手が簡単』というポイント、さらに、『何となく弦が少ない方が簡単そうだ』というイメージから、弦の数が少ない方が簡単と勘違いしてしまっているんです。

ややこしくなってきましたので、まとめます。


・弦が少ない弦楽器→<左手が複雑><右手が簡単>

・弦が多い弦楽器→<左手が簡単><右手が複雑>


さて、右手の方が器用に動く右利きの皆さん、簡単に弾きたいと思ったらどちらの楽器を選びますか?


そしてもう1つ、弦が多い弦楽器の有利な点があります。

それが、コード演奏です。

単純に考えて、1本の弦しかない場合は、コードは絶対に弾けません。3つの音で出来たコードを弾くなら最低3本、4つの音で出来たコードを弾くなら最低でも4本の弦が必要になります。さらにもっと弦が多くなれば、押さえ方の選択肢が増えるので『同じコードでも簡単な押さえ方を選ぶことが出来る』ようになります。

つまり、『弦が多ければ多いほど、コードの押さえ方が簡単になる』ということです。


チューニングを沖縄音階に合わせたよなおしギターは、(オクターブを入れた)6つの音で出来た沖縄音階を、左手を何も使わずに簡単に演奏することが出来ます。これは、弦が6本あるからこそ可能な演奏方法です。さらに、和音も簡単に弾くことが出来るので、上の動画の様に、沖縄独特のメロディを簡単に奏でることが出来、その上で、コードでの伴奏も同時に出来るわけです。

一方で。三線は、沖縄の伝統楽器ではあるのですが、メロディとして主に使われる沖縄音階を弾くにも絶対に左手を使わなければなりません。それは、6つの音階に対して弦が3本しかないからです。さらに、コードも4つ以上の音を使うものは演奏できません。

これが『沖縄音階にチューニングされたよなおしギターは、沖縄の伝統楽器である三線よりも簡単に沖縄独特のメロディが弾ける』理由です。

とはいえ。三線は、伴奏の概念がギターとは異なりますので、よなおしギターとも一概に比較することはできません。さらに、人の心を打つ音という意味では、これ以上の楽器は無いと思うほどのパワーを持つ音がします。つまり、三線の真価は、演奏方法うんぬんよりその音にあると思うんです。

唯一無二の音ですね。

沖縄の音楽を語る上では絶対に欠かすことの出来ない、素晴らしい楽器です。




よなおしギター



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よなおしギターによる『海の声』



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