2016年01月29日

よなおしギターによる『ハナミズキ』弾き語りアレンジ

私が、よなおしギターで演奏動画や演奏音源を制作する場合、まず最初に行うのが編曲(アレンジ)です。

既存の楽器、例えば、ピアノやギターでは、もう既に様々な人が様々な曲を様々なアレンジ方法で演奏し、それが楽譜として存在する場合が多いですね。もし既存の楽器で演奏動画や演奏音源を制作するのであれば、それらの楽譜を参考にすればよいので、自分でアレンジを行う必要もそれほど無いわけです。

ただ、よなおしギターは、まだまだ認知度が低く、この楽器を使ってアレンジを行っているのは世界広しといえど私だけです。もちろん、私自身で全てアレンジしなければなりません。

曲を決めた後は、『これをどんなアレンジで演奏しようか?』と頭を悩ませるわけです。

よなおしギターは、音域が2オクターブほどです。ピアノやギターに比べればその音域は狭く、アレンジや演奏をするにあたっての制約も多いといえます。
ただ、曲のアレンジに関する基本の考え方は、もちろんピアノやギターも含め、どの楽器も同じであると思っていますし。制限があるということは、もっと広~い音域を使える楽器よりも、場合によっては逆にアレンジはしやすいとも言えるかもしれません。

絵に色を塗る場合、60色の色鉛筆よりも12色の色鉛筆の方が使う色で迷うことが少なくて済む、のと同じ感じでしょうか。
60色を使いこなせば素晴らしい絵が出来るでしょう。ただ、それにはある程度の技術と知識と経験、それに才能が必要になるわけです。

よなおしギターは、気軽に使える12色の色鉛筆のように、それほど経験が無い方でもあまり迷うことなく使う音色を選んでアレンジしていくことが出来るわけですね。

今回は、一青窈さんの『ハナミズキ』を、歌いながら弾く『弾き語り』を前提にアレンジしてみました。

弾き語りアレンジの最大のポイントは、当然ですが『弾きながら歌えること』です。そして、弾き語りで最も大切なのは『歌』です。

つまり、弾き語り用のアレンジでは『伴奏は歌いながら弾けるぐらい簡単』で良いんです。

『ハナミズキ』は、意外とコードが難しく、使われているコードのほとんどが四声和音といわれる『4つの音で出来たコード』です。これをそのまま、よなおしギターで演奏したのでは、いくらよなおしギターでも演奏が難しくなってしまいます。

そこで、アレンジです。

アレンジは、演奏を難しくしたり格好良く聞かせたりするだけのものではありません。特に、私のように教室でレッスンを行っていて、実施に弾く人がどんな人なのかを把握できる場合、その人が楽しく練習できるように、その人に合ったアレンジを行うことがほとんどなんです。

つまり、『演奏者のことを思うこと』も、アレンジには欠かせない要素となります。

例えば、『ハナミズキ』のサビの部分に < Bm7(♭5) > というコードが出てきます。このコードは、4つの音で出来ていますが、不安定な響きのするあまり使用頻度の高くないコードです。よなおしギターで弾くのも、何だか難しそうです。

そこでまず、弾く人を思い浮かべます。音楽の知識や楽器経験の有無、手の大きさなど。それに、よなおしギターの経験を加味します。

ここでは、演奏者が『よなおしギターを含め、楽器で弾き語りをするのは初めて』と仮定して、実際のアレンジをしてみましょう。

まず、 < Bm7(♭5) > の押さえ方を考える前に、その前後のコードを調べます。

ギターでは、前後のコードとの共通点が多いほど、コードの移り変わりが簡単に出来ます。左手で押さえている場所や右手で弾く弦に前後のコードとの共通点があれば、その部分だけはコードが変わっても指を動かさずに済みますからね。

コード進行を見てみると、< Bm7(♭5) > の後は < E7 > になることが分かりました。

もし、このコード進行を全ての音を出してよなおしギターで弾くとすると、以下のような押さえ方になります。

よなおしギターによる『ハナミズキ』弾き語りアレンジ

一見しても、左手の指で押さえる場所が多く、難しそうですね。右手に関しては、どちらも1~4弦の4本を弾くので弾く弦は共通していますが、指4本(小指以外)を使わなければなりません。これでは、弾き語りが初めての人にとっては、マスターするのが大変ですね。
このように4つの音を同時に出すのは、かなり困難な作業となります。

そこで、とにかく曲全体を通して『3つの音で弾けるようにアレンジ』しようと思いました。

そうすれば、左手の指は最大でも3本しか使わずに済みます。

当然、< Bm7(♭5) > も、3つの音しか弾きません。つまり、1音犠牲にするということですね。

4つの音から3つの音のコードに変更するということは、弾く音(弾かない音)を選択していくということです。音の選定の基準はいろいろあると思いますが、ここでは、『前後のコードとの共通点を多くする』ことを基準にして音を選択していきましょう。
すると、以下のようになりました。

よなおしギターによる『ハナミズキ』弾き語りアレンジ

これなら、左手も最大で3か所押さえれば良いので、ある程度は弾きやすくなると思います。右手も、同じ3本の指で同じ弦を弾けば良いので、あまり意識しないで済みます。

それでも、よなおしギターの演奏としてはかなり難しいですが・・・。

このように『前後のコードとの共通点を多くする』ことを基準に音の選定をしていくのですが、その作業の中でも『曲の雰囲気を保つ』という意識を常に持っていなければなりません。
いくら演奏が簡単になっても『曲の雰囲気』が失われたのでは、弾き語りも盛り上がりませんし、なにより、弾いていて面白くありませんからね。

つまり、この場合のアレンジは、『簡単』と『曲の雰囲気』の絶妙なバランスを模索していく作業ということになります。

演奏の難易度を気にせずアレンジするのは、それほど難しくないと思いますが、よなおしギターは、その性質上、この楽器を演奏してくださる人のことを思えば、なるべく『簡単』に弾けるようにしたいんですね。ただ、あまり簡単にし過ぎて『曲の雰囲気』を失ってしまっては、せっかくギターを弾いてるのに楽しくありません。

私がよなおしギターで曲をアレンジする場合は、常にそんな考え方で行っているわけです。

今回は、参考のために『ハナミズキ』のコード譜と、私がよなおしギター用にアレンジしたコード表を載せてみます。もし余裕がある方は、コードの構成音と、実際によなおしギターで出している音を比べてみて下さい。

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よなおしギターによる『ハナミズキ』弾き語りアレンジ





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Posted by sinya at 22:37 │奏法音楽理論