2017年06月19日

レベル2『たなばたさま』

よなおしギターの最大の特徴は、『チューニングがヨナ抜き音階』であることですね。

つまり、よなおしギターを上の弦(低い音の6弦)から順に鳴らしていくと以下のような音が出ます。

< ド レ ミ ソ ラ ド >

この特徴により、よなおしギターは『1オクターブ以内のヨナ抜き音階で作られた曲なら片手で演奏できる』という画期的な楽器となり得るわけです。

もう少し詳しく見ますと。よなおしギターのチューニングである <ドレミソラド> という音階は、『ハ長調のヨナ抜き音階』ということになります。ということは、もう少し正確によなおしギターの特徴を表現するなら『1オクターブ以内のハ長調のヨナ抜き音階で作られた曲なら片手で演奏できる』ということになるんです。

曲というのは様々な『調』で作られます。

その『調』はどうやって決まるのかと言えば、歌う人の音域を考慮したり、曲の雰囲気を大切にしたり、もしかしたら、演奏のし易さや演奏する楽器によって決まることもあるかもしれません。

例えば、よなおしギターの演奏でも人気の高い『浜千鳥』は、1オクターブのヨナ抜き音階で作られた曲なのですが、一般的な楽譜だとその調は『変ホ長調』あるいは『二長調』で表記されている場合が多いんです。この曲をその両方の調で演奏し比べてみますと、確かにそれぞれの調は雰囲気が違って聞こえます。

で、『浜千鳥』が1オクターブのヨナ抜き音階で作られた曲だからと、よなおしギターで『変ホ長調』や『ニ長調』のままで演奏すると、とても難しくなってしまいます。そこで、調をハ長調に変えて楽譜を作り直すわけです。

つまり、『1オクターブ以内のハ長調のヨナ抜き音階で作られた曲』に直してしまうんですね。

そうすることで、よなおしギターで片手で演奏することが出来るようになるんです。

このように、1オクターブ以内のヨナ抜き音階で出来ている曲であれば、例え調がハ長調ではなくても、楽譜をハ長調に書き換えてしまうことで、よなおしギターで簡単に演奏することが出来るのですが・・・

ただ、例外となる曲もあるんです。

つまり、『1オクターブ以内のヨナ抜き音階で作られた曲』であっても、『ハ長調に書き換えることによって逆に演奏が難しくなってしまう曲』というものが存在します。

昭和16年3月に文部省が発行した唱歌に『たなばたさま』という曲があります。日本人なら知らない人はいないのではないかというぐらい有名な曲ですね。この時期、幼稚園や保育園では盛んに練習されているのではないでしょうか。

この『たなばたさま』、1オクターブ以内のヨナ抜き音階で作られた、いかにも唱歌という曲なのですが、一般的な歌集ではその調が『ト長調』で表記されています。

つまり、『1オクターブ以内のト長調のヨナ抜き音階で作られた曲』ということになります。

普段なら、この曲をハ長調に書き換えることで、よなおしギターでも簡単に演奏できる曲、つまりレベル1の曲となり得ると思ってしまうのですが・・・

実際にこの曲をハ長調に書き換えると、演奏レベルが3になってしまうんです。

それはなぜか?実は、使われている音の音程(音の高さ)が関係しているんです。

『たなばたさま』をハ長調に書き換えると、メロディの最初の音は <ソ> になります。よなおしギターで <ソ> を弾く場合は3弦でしたね。つまり、この曲をハ長調にしてよなおしギターで演奏する場合は、3弦からスタートすることになります。

次に、<ささのはー> という歌詞の <のはー> はそれぞれ、1弦と1弦の2フレットを押さえた音になりますが、その後の <さーらさらー> という歌詞のメロディが、実は『オクターブフレット』を使わなければ出せない『高い<ミ>の音』になるんです。

よなおしギターで『オクターブフレット』を使う曲はレベル3になってしまいます。

さらに、<のきばに> の <きば> の歌詞の部分は、『高い<ソ>の音』です。ここでも『オクターブフレット』を使わなければなりません。

このように、『たなばたさま』という曲をハ長調に書き換えてしまうと、レベル3の曲になってしまうんです。

なぜ、こんな現象が起こってしまうのか?なぜ、『1オクターブ以内のハ長調のヨナ抜き音階で作られた曲』に書き換えたのに、片手だけでは弾けずに『オクターブフレット』も使わなければならないのか?

それは、『始まりの音が高いから』ということに尽きます。

『たなばたさま』は、始まりの音がメロディの中で一番低い音になります。以後、それよりも低い音は出てきません。ですから、メロディはその始まりの音からどんどん高くなって展開していくわけです。

その始まりの音が、よなおしギターでは3弦の音になってしまうわけで。よなおしギターのチューニングの中でその3弦より高い音はもう2弦と1弦しかないわけです。

つまり、曲のメロディはまだまだ高い音を使うのに、よなおしギターでは、あと高い音は2弦と1弦の2音しか残ってないですよ~!もしそれ以上高い音を使いたければ、『オクターブフレット』を使う以外に方法は無いですよ~!という訳です。

残念ながら、『たなばたさま』のように、せっかく『1オクターブ以内のヨナ抜き音階で作られた曲』であるのに、よなおしギターで片手で演奏することが出来ない曲がいくつかあります。

それらの曲は、よなおしギターで片手で演奏できる曲、つまりレベル1の曲とはなり得ません・・・

という訳で。今までこういった『たなばたさま』のような曲は、楽譜にすることなく保留にしていたんです。ただ、よなおしギターのレッスンを2年以上もやってますと、皆さんドンドン上達していき、レパートリーも増えてきて、次から次に楽譜を作成していかなければならなくなります。こちらも、生徒さんに合わせて何とか様々な曲をよなおしギターで演奏できるように工夫し楽譜を制作している状態で、いよいよ七夕が近づいてきた時期となり保留にしていた『たなばたさま』に着手してみたわけです。

何とか、オクターブフレットを使わずに演奏できるようにしたい!片手で演奏するのは無理だとしても、せめてレベル2の曲としてコード伴奏も含め気軽に弾いてもらいたい!と、いろいろ考えてみました。

結果を言いますと、この『たなばたさま』は、もともとの一般的な歌集に載っている『ト長調』の状態で演奏することで、メロディはレベル2、コード伴奏もハ長調の曲と同じくらい簡単に演奏できることが分かりました。

そうして作成した楽譜がこちらです。

レベル2『たなばたさま』

※画像をクリックしていただくと大きく表示されます。


是非、興味のある方は七夕に向けて練習してみてください。そして、なぜこの曲は、ハ長調にするよりもト長調のままの方が簡単に演奏できるのかを考えてみるのも面白いですね。

ヒントは、『始まりの音』です。

また、『調』に関して興味のある方は、私が以前ブログに投稿した記事も参考にしてください。
※ブログ内では、『調』のことを『キイ』と表記しています。意味は同じと思って頂いて差し支えありません。

ブログ記事『最初に挑戦する曲は?』

ブログ記事『この曲のキイは何か?』


ブログの引っ越しをしました!

新ブログのURLは以下になります。(クリックしていただくと新しいブログが開きます)

http://yonaoshiguitar.blog.jp/

レベル2『たなばたさま』



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